2024年4月のイスラエルによるダマスカスのイラン大使館空爆 | |
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場所 |
シリア ダマスカス県ダマスカス |
日付 | 2024年4月1日 |
攻撃手段 | 戦闘機による空爆 |
死亡者 |
16人 |
被害者 | 16人 |
物的被害 | 総領事館の一部が破壊された |
犯人 | イスラエル国防軍 |
対処 | イラン政府がイスラエルに対して報復を宣言、2024年4月のイランによるイスラエル攻撃が発生 |
謝罪 | なし |
補償 | なし |
賠償 | なし |
2024年4月のイスラエルによるダマスカスのイラン大使館空爆(2024ねん4がつのイスラエルによるダマスカスのイランたいしかんくうばく、英語: 2024 Israeli bombing of the Iranian embassy in Damascus)は、2024年(令和6年)4月1日にシリア・アラブ共和国の首都ダマスカスにあるイラン大使館領事館別館がイスラエル国防軍によって空爆を受けた出来事[1][2][3][4]。
背景
1979年に起きたイラン革命以来、イランはシリアにイラン軍を駐留し現在まで駐留を続けている。さらに、シリアだけでなくシリアの隣国レバノンでも、イラクやアフガニスタンの外国民兵とともに、民兵組織ヒズボラの訓練と資金提供にも関与している[5]。2011年にシリア内戦が勃発して以来、イスラエルはシリア国内のヒズボラの拠点を標的に数百回の空爆を実施してきた[6]。
2023年10月にパレスチナ・イスラエル戦争が勃発すると、イスラエルはシリアへの攻撃を強化した[7]。2023年10月12日から22日にかけて、イスラエル国防軍はシリアの空港、特に首都ダマスカスとアレッポに対して少なくとも3回の攻撃を開始した[8][9]。特に、イスラエルは2023年12月25日にシリアの首都ダマスカスでイラン革命防衛隊の精鋭部隊ゴドス軍の司令官ラズィー・ムーサヴィー准将の暗殺を実行し、2024年1月20日には革命防衛隊の精鋭部隊ゴドス軍の情報担当の高官サーデグ・オミードザーデ准将の暗殺を実行した[10][11][12]。
攻撃
2024年4月1日にシリアの首都ダマスカスのイラン大使館に隣接するイラン総領事館別館がイスラエル航空宇宙軍の空爆により破壊された。イラン大使のホセイン・アクバリは、総領事館の建物が「イスラエル国防軍のF-35戦闘機から6発のミサイルで標的にされた」と発表した[13]。この空爆によってイスラム革命防衛隊兵士7名、イラン支援の民兵5名、ヒズボラ戦闘員1名、イラン人顧問1名、民間人2名 (女性と息子) を含む合計16名が殺害された[14][15]。
目標
攻撃の主な標的とされたのは革命防衛隊の精鋭部隊とされているゴドス軍 (コッズ部隊) 司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将だった。死傷者には、ザヘディ司令官に加えて、ザヘディ司令官の副司令官モハマド・ハディ・ハジ・ラヒミと、ホセイン・アマン・エラヒ、サイード・メフディ・ジャララティ、アリ・アガ・ババエイ、サイード・アリ・サレヒ・ルーズバハニ、モーセン・セダガートの5人のイラン高官も含まれていた[16]。
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズ紙は、革命防衛隊の匿名情報筋が、今回の攻撃はガザ戦争について話し合っていたイラン諜報当局者とパレスチナ・イスラム聖戦の指導者らパレスチナ過激派との会談を標的としたものだと主張した[17]。
反応
当事者
- イラン
- 最高指導者アリー・ハメネイは2日、声明を発表し「憎しみに満ちたイスラエルの政権による犯罪だ」と非難した上で「邪悪な政権は罰せられるだろう。我々はこの犯罪を後悔させる」として報復を誓った。
- エブラーヒーム・ライースィー(ライシ)大統領は「抵抗戦線の意志を打ち砕くことに失敗したシオニスト政権(イスラエル)は、自国を救うために再び無差別的な暗殺を実行した」と非難した。
- ハメネイの政治顧問アリー・シャムハーニーは、「この攻撃を実行する意図を認識していたか否かにかかわらず、米国には直接責任がある」と述べた[18]。イランも国連安全保障理事会に書簡を送り、「断固たる対応をする正当かつ固有の権利を留保する」と述べた[19]。
- 首都テヘランをはじめ、タブリーズやイスファハーンを含むイラン全土のいくつかの都市では、大群衆がパレスチナとイランの旗を振りながら復讐を要求して集まった[20][21]。
- イスラエル
- 国防軍のダニエル・ハガリ報道官は記者団に対し、「我々の情報によると、ここは領事館でも大使館でもない」と語り、攻撃された標的は「ダマスカスにある民間施設を装ったゴドス軍の軍事施設」だったと付け加えた。
- ヨアヴ・ギャラント国防大臣は、「イスラエルは、中東全土で我々に敵対するすべての人に、イスラエルに対して行動する代償は大きな代償となることを明確にするよう取り組んでいる」と述べた。
- シリア
- ファイサル・メクダド外相は今回の空爆を非難し、無実の人々を殺害した「テロ攻撃」と呼んだ[22]。
外国の反応
- 中国
- 中国政府は今回の攻撃を非難し、外交部の汪文斌報道官は「外交機関の安全を侵害することはできず、シリアの主権、独立、領土保全は尊重されるべきだ」と述べた。
- クウェート
- クウェート外務省はこの攻撃を国際法違反だと非難した。
- レバノン
- レバノン外務省は、この攻撃は「国際法違反であり、外交および領事関係に関するウィーン条約の重大な違反」であると述べ、この攻撃を非難した。
脚注
出典
- ^ 日本放送協会 (2024年4月3日). “イラン大使館攻撃で国連安保理 緊急会合 | NHK”. NHKニュース. 2024年4月3日閲覧。
- ^ “シリアのイラン大使館領事部に空爆、死者多数 イスラエルを非難”. BBCニュース (2024年4月2日). 2024年4月3日閲覧。
- ^ “シリアのイラン大使館をイスラエル軍が空爆 革命防衛隊司令官ら7人死亡”. テレ朝news. 2024年4月3日閲覧。
- ^ “シリアのイラン大使館周辺が空爆受け6人死亡、イスラエルが攻撃か…イラン国営テレビ報道”. 読売新聞オンライン (2024年4月2日). 2024年4月3日閲覧。
- ^ “Exclusive: Iran's Guards pull officers from Syria after Israeli strikes”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Israel says it launched 200 strikes in Syria since 2017” (英語). Al Jazeera. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Israel shifts to deadlier strikes on Iran-linked targets in Syria”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Syria says Israeli missiles hit Damascus, Aleppo airports”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Israeli attack on Syrian Aleppo airport puts it out of service”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Israeli airstrike in Syria kills senior Iranian Revolutionary Guards member”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Iran says senior IRGC officials dead in Israel strike on Damascus”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Iranian general killed in Syria, says IRGC’s source” (英語). Trend.Az (2024年1月20日). 2024年4月4日閲覧。
- ^ Goodwin, Hande Atay Alam, Adam Pourahmadi, Tara John, Lauren Kent, Allegra (2024年4月1日). “Iran accuses Israel of killing Iranian military commanders and others in airstrike on consulate in Syria” (英語). CNN. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Death toll update | 14 people killed in Israel attack on building of the Iranian embassy in Damascus”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Death toll update | Woman and her son among 16 people killed in Israeli raid on building attached to Iranian embassy”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ Chao-Fong, Léonie (2024年4月1日). “Middle East crisis: Iran’s Revolutionary Guards Corps says two of its generals killed in Damascus consulate strike – as it happened” (英語). the Guardian. ISSN 0261-3077 2024年4月4日閲覧。
- ^ Taub, Amanda (2024年4月2日). “Israel bombed an Iranian Embassy complex. Is that allowed?” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Iran vows revenge on Israel after Damascus embassy attack”. 2024年4月4日閲覧。
- ^ “UN Security Council to review Iran’s demand to condemn Israeli strike”. TASS. 2024年4月4日閲覧。
- ^ Fassihi, Farnaz; Bigg, Matthew Mpoke (2024年4月2日). “Iran Says the Deadly Israeli Strike in Damascus Will Not Go Unanswered” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Iran vows deadly suspected Israeli airstrike on its consulate in Damascus "will not go unanswered" - CBS News” (英語). www.cbsnews.com (2024年4月2日). 2024年4月4日閲覧。
- ^ “Iran says Israel bombs its embassy in Syria, kills commanders”. 2024年4月5日閲覧。